2015年7月15日水曜日

豚骨原理主義者の心得


旧blogだったか旧々だったか、僕は「豚骨原理主義者の作法」について述べた。その内容とは、豚骨屋のカウンターにおいての正しき立ち居振る舞いについて述べたものである。つまり、注文の仕方、待ち方、丼が供されてからの麺の食し方、味玉にかぶりつく最適のタイミング、替え玉の手順、スープを飲むことの是非等、完食までの流れと場面場面での正しき作法を時間軸に添って書いたものだ。今回は、自宅等キッチンにおいて豚骨ラーメンの材料を用意するところからはじめ、素材、下ごしらえ、そして調理してどんぶりに盛るまでの流れを書こう。


用意する豚骨ラーメンは、市販されている袋麺で良い。この世の中には、小麦粉の選定、製麺、豚骨スープの自作から手がける達人も存在する。しかしここに至れば達人などと気安く呼ぶべきではなく「豚骨聖」と呼ぶのがふさわしかろう。つまり、麺、スープの自作はあまりにも遠い地平なので、本稿ではインスタントの袋麺で良しとする。


ただし注意しなければならない事柄がある。


まず、麺は醜くちぢれたものではいけない。正しい麺とは、真っ直ぐである。つぎに、黄色く染め上げた麺ではいけない。正しい麺は白くあるべきである。今回は、熊本・五木食品の『クマもんの熊本ラーメン黒マー油入り』を採用したが、博多長浜、久留米などでも好ましい品が市販されている。










次に、具材である。豚骨ラーメンの正しい具材とは次の五点に限る。ひとつ、青葱。ひとつ、高菜漬け。ひとつ、紅生姜。ひとつ、白胡椒。ひとつ、白ごま。以上である。

青葱は、どんな間違いを犯してもこれだけは間違ってはならない。白ネギなどを決して用いてはならないのだ。白い葱を刻んだ瞬間、その豚骨ラーメンはすでに終焉を迎えている。

高菜漬けは、支那産のものが多く売られているが、信州では「ツルヤ」店頭で国産品が手に入る。九州の家庭では普通のようだが、僕はこれを炒めて味付けしたものを常備し、高菜ご飯などにも展開させている。

紅生姜であるが、これは初夏から出回る新生姜を買い求め、梅酢に漬けて自作している。大量に仕込んで通年味わうのだ。焼き魚に添えたり、そのまま齧ったり、活躍の場面は多い。

白胡椒であるが、いかなる過ちを犯したとしても黒胡椒であってはならない。北アルプスの稜線に降る雪の如く、正しき豚骨ラーメンに振られる胡椒は絶対に白くなければならない。

白ごまであるが、炒りごまでも摺りごまでもでも構わない。

ここにキクラゲの記述が無いことを訝しく思われるかもしれない。たしかにキクラゲは重要である。重要であるが、必要不可欠ではない。あれば好ましいもの、と位置づけておく。





この日は日曜日である。だから肉を添えよう。焼豚は常備していないので、豚バラ肉を炒める。にんにくは信州松本産の地物。





大切なことがある。ひとつ。ラーメンのスープに用いる湯は、茹で湯ではなく、さらの湯を使う。





大切な事柄の、ふたつめである。青葱は、摘みたてを用いる。湯を沸かし始めてから庭なりプランターなりから、摘む。青葱の自家栽培は豚骨原理主義者の基本である。鮮度のうかがい知れないものを購入するなど、断じて在ってはならない。

青葱は、麺を茹でている間に刻む。したがって麺の茹で上がりと刻み上がりが同タイミングになる。かため、バリカタ、ハリガネぐらいを好む向きには差し支えないが、「粉落とし」を信条としていると忙しくなる。




完成である。

これぞ、これこそが正しき豚骨原理主義者の豚骨ラーメンである。









1 件のコメント:

  1. ネギを育てるとか紅生姜から作るとか、完全に狂ってる。

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