2016年8月7日日曜日

折り返す日

炎天に梅を干している。

これが「ずく」の要る仕事で、梅仕事の核心部と言えるかもしれない。しゃがみ込んで、笊に開けられた梅の実を、ひと粒ずつ丁寧にていねいに、ひっくり返す。朝から夕方までに、これを二回ぐらい行う。40キロも仕込んでは干しているので、干す日にはこれが何時間も掛かるのだ。

すごい汗が出る。使い捨てのポリ手袋をしていると、吹き出る汗の量が判る。ぜったいに垂らしてはならないので、首にも頭にもタオルを巻いている。長袖を着ている。悪夢というか地獄というか、炎天下の拷問である。

水分補給が欠かせないので、チタンのマグに濃いめの水割りを用意する。300とか450ではすぐ空になる。だから去年から梅仕事用にspの600mlマグを愛用している。チタンポットの「極」とかアルミの「焚」なら830ml入るから、来年はそうしよう。とにかく早朝から、マグを呷りながら、ウイスキーを流し込みながら、干し上げる。これが夕方まで続くのだ。

梅を干すとは、大変な仕事なのである。



多いロット少ないロット、合わせて13のロットが、どんどん完成していく。強烈な紫外線を浴びて、梅の実に残っていた葉緑素が消えていく。梅が、梅干しに昇華する。真夏の太陽とは、酷ではあるが有り難いものなのだ。





その肌を焼き尽くせ。



梅を干しながら、ふと生け垣の傍らのナナカマドの樹が目に入った。


梢の先が、紅く染まっている。稜線のナナカマドたちは、既に真夏にこうした色合いを帯びる。下界は違う、と認識していたのだが、まち外れの拙宅の庭でも、夏が退こうとしている。季節またひとつ、折り返したのだ。






ひまわりが、こんな勢いで育つとは知らなんだ。先月辺りはひょろひょろしてたのに。





近所の朝顔も良い色。





地区行事の子供神輿。当地まつもとの古くからのならわしで、男の子たちが参加する「青山さま」。一方、女の子たちは浴衣姿で提灯をともし、哀愁を帯びたうたを歌いながら練り歩く「ぼんぼん」を催す。これが、今夜と明日に行われる。





毎年鮮やかな色合いを見せてくれる、この花。名前は知らない。





完成した梅干も、瓶のまま仕上げ干しをさせてやる。キャップを少し緩め、水蒸気を逃がしてやる。おもてにざらっと白く塩吹くまで。





坊主も娘も、どのような「えにし」なのか、楽器を触る。部活で県大会などの大会が例年通り行われ、僕もコンサートホールに何度か足を運んで演奏を聴いた。






盆が近い。季節はとどまること無く移ろい、過ぎ去っていく。夏のてっぺんに居ながら、夏が去っていこうと踵を返す瞬間に、僕は立ち止まっている。





9 件のコメント:

  1. もはや個人レベルの梅干し造りではない。
    一ノ沢とか三股とか中房で行商すれば?
    「いまるぷ印の梅干し」

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    1. 団長。じつはこの記事が『偏執手帳』百本目の記念すべき記事なんですよ。
      おめでとうございます、見事、団長がコメント書き込みなさいました。
      お祝いに、そうですな、ロマネコンティ100本とか、ドンペリ100バレルとか
      ジャックダニエル100ケースとか、そういう「贈り物ライツ」を差し上げますよ。

      梅干し、まぢで販売考えてるんですが、作業場に「住居と違う専用トイレ」が
      必要なところまでは調べました。建築費用は口座にお願いします。

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  2. マスノスケ2016年8月19日 14:49

    師匠、

    この記事の写真、どれもが真夏の暑い日差しを感じます。
    それにしてもこの梅干しうまそうですね。汗を滴らせながら登ったいただきの上で塩の聞いたおにぎりの中から出てくるこの梅干しを想像するだけで、唾液が、、、、、

    いつかきっと、、、、

    ともあれ、こちらはもう秋ですぜ、もうキノコのシーズンもピークを過ぎました。今年は沢山とれました。

    まもなく紅葉そして、1ヶ月もしないうちに山は冠雪すると思います。

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    1. アラスカの兄貴、遅くなりやして申し訳茄子!
      毎日遅くて、帰宅後にMacの電源入れる余裕すら無く...

      今日、八月の末日ですが、昨日の台風が秋を連れてきたと見えて
      なんとも涼しい風が吹き流れております。夏は逝ったか?
      アラスカの山々の冠雪、それはそれは美しいものなのでしょう。
      信州松本からでも、常念山脈が白く染まると、迫り来る冬をおもって
      身が引き締まります。というか、あの寒さを思い出してしまうのですが
      ご当地ではそんなレベルではないのですよね。

      信州のキノコはこれからです。松林のある里山に入ると
      (もちろん留山では御法度ですが)ついつい地面の膨らみに
      敏感になってしまいます。そうだ、土瓶を洗っておかなくては。

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  3. 素晴らしい梅仕事‼️ イマルプさん、凄いですねぇ。私は梅太郎のファンなので、満月の日に燕岳一泊してきました。
    写真の花は、タチアオイだと思います。
    マダム・アマカザァリより

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    1. マダァム。遅くなってしまって申し訳も無く。
      ただただお詫び申し上げます。
      リアル梅太郎さんに逢ってこられたのですね。
      僕も大好きです。「山の眼玉」「山のでべそ」手元にあります。
      そして燕山荘にも出かけて、たしか階段の踊り場みたいなところに掲げてあった
      リアル梅太郎を眺めてきました。
      タチアオイありがとうございます。昨日の台風で秋が来たみたいですね。
      どの花たちもしょんぼりしているようです。

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    2. 忘れてましたマダァム。
      頂いたコメントが記念すべき200本目です。
      ありがとうございました。

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  4. イマルプさん、今日槍ヶ岳から帰ってきました。台風の去った31日に中房温泉からヒュッテ西岳に泊まり、今日、憧れの槍ヶ岳に登ってきました。空は青く景色も良く、富士山も見えました。朝は槍ヶ岳のモルゲンロートが見え、幸せいっぱいに今日は下山してきました。おばさん一人縦走でした。 200本目おめでとうございます^_^
    また、どこかでお会いしたいです!
    マダム・アマカザァリより

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    1. おお、台風一過の表銀座縦走ですか、すばらしい。
      表銀座と言えば西岳の鉄ハシゴ。小屋番時代、あのハシゴを
      「残雪期で半ば雪に埋もれている雪壁状態、丸太を二本担いで下れ」
      というミッションは忘れがたいものです。
      同僚のネパール人はひょいひょい降りていきましたが
      自分はガクブルでチビリそうになりながらでありました。

      秋の景色を眺めに、近場で何処か出かけましょう。
      高い所でも低いところでも、行きたいお山がたくさんあります。
      休みはほぼ日曜のみですが、是非に!

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