坂道を下ってバス通りを渡る。ひとり、角の白い暖簾をくぐると、そこにはたましいを震わせる味わいが待ち受ける、魔界だ。
「いらっしゃい、大間の本鮪が入ったよ」
俺はカウンターの椅子を引きながら「すこし切ってくれないか」と主人に告げる。そして冷えた地酒を頼むことも忘れてはいない。主人は大間の本鮪を引きながら呑気なことを言う。
「昼間っから飲めるなんて、良い身分だねえ」
俺は静かに切り返す。「ふふふ、自分へのご褒美さ」
タフな週末だった。地区行事のために、土曜日には30人前のカレーを作り、夕方は焚き火に飯ごうを載せて飯を炊いた。今朝はそれら鍋釜を汚した煤を洗い流し、すべて片付け終えたのは日曜の昼だ。これ以上、寿司屋の暖簾をくぐるのにふさわしい状況はあり得ない。
大間の本鮪の赤身は、噛み締めるほどもなくほどけて、俺の脳髄を融かしていった。冷えた地酒『岩波』と響き合う。カウンター席で俺は、身悶えていた。
嗚呼辛口よ、響くがいい。奏でるがいい。
豆鯵の南蛮よ、俺はむせび泣く。
四合を空けて、握りを頼む。
このかんぴょうが絶妙なのだ。そして齧りかけの卵焼き、真っ先に箸が出てしまってぱくぅである。落ち着き払った振りをするのは、もう限界だ。「あぐうぅ」「うはうぅ」と奇怪な呻きを漏らしながら、俺は握りにぱくつく。
いきなり主人が斬りつけてきた。
「こはだの締まり具合、試してみる?」
もう恍惚となる締め具合。選び抜かれた素材を、技がここまで磨き上げるのだ。たまらん。
松本江戸銀。お近くの方は、ぜし。
お久しぶりです。Akira(十勝)です。コハダを見て、のたうちまわっています。こちらは生イクラのシーズンなんですが、不漁のせいか、今年は高いわ。んでもって、夏の終わりということで三升漬を漬けました。明日から秋です。
返信削除十勝の兄貴、お久しぶりです。
削除このところ、死にかけるようなトラブルに見舞われていまして遅くなりました。
いえ、キーボードが壊れたり。壊れた理由は記事に書きました、お嗤いください。
三升漬け、似たようなものを僕も作っています。
でももう味わうことはないかもしれません。理由は新しい記事に....
たまごの厚さが最高だ。
返信削除たまんねえなぁ…。
師匠、すいません遅くなりまして。
削除いやあ三途の川の流れが激しくて、押し戻されましたよ。
現世に執着が強すぎるんでしょうか。
いきさつは、ご覧の通りということで。(合掌)