数日前、安曇野で燕が飛び交うのを見た。いよいよ春。スノーシーズンの終わりも間近と感じる。そう、春を迎える嬉しさには、一抹の寂しさが混じるのだ。そこで腹いっぱい雪にまみれたくて、手近な山へと出掛ける。
2015年3月28日。安曇野からモルゲンロートの常念。
これから向う山群は常念山脈から派生する2,000mクラスの山々。こちらにも、朝の光。
標高868m、金松寺山林道のゲートをスタート地点に。しばらくは林道歩きが続く。
林道は行き止まりとなり、山道に入る。この入山地点からはたっぷりの雪がお出迎え。檜の植林の中を黙々と足を運び、高度を稼ぐ。急な登りに身体が絞られる。
1,529m、金松寺山山頂分岐を見送る。
これから向う天狗岩1964.1m(左)。右は黒沢山2051.4m、天狗岩から先の道はない。
金松寺山と天狗岩をつなぐ稜線に出る。南側の一部で笹が出ている。
高度が上がってくると、視界が開けてくる。小休止しよう。
定番の大福が売り切れていたので、この日は羊羹を行動食に選んだ。
左から八ヶ岳の横岳、赤岳、重なって阿弥陀、権現、編笠。手前の稜線は高ボッチから塩嶺峠へと続く中央分水嶺。
視線を南に振ると、富士が頭を出す。鳳凰三山はクリックで拡大をご覧あれ。地蔵のオベリスクが確認できる。尖った甲斐駒、駒津峰、双児山、北沢峠。
南の高峰たち。さらに右には塩見荒川聖光まで。塩尻の丘陵にたなびく霞も美しい。
残雪の尾根に兆す春。南アルプスを振り返り振り返り、天狗岩を目指す。
空へと続く、白き尾根。
安曇野の彼方には、北信濃の山々が。
雪の尾根を、どこまでもどこまでも。ノートレース、誰にも会わない。
最後の急登はストックをピッケルに持ち替えて、這い上がる。ここはてっぺんに雪を載せた天狗岩。左奥が八ヶ岳、中央から右奥が南アルプス。
今回はスルーした金松寺山 1,625mが眼下に見える。
南西方向に御嶽。
いまだ歩く機会のない鉢盛山。いつか、そのうち。
真南に木曽駒から三ノ沢岳の稜線。
天狗岩山頂1,964.1mの山名案内板。ゲートからほぼ高度差1,000メートル、2時間40分かかっている。
そして、間近に仰ぐ気高き岩の伽藍。左の明神、奥明神沢のコルを挟んで前穂のピーク、重なってすぐ右に奥穂。その迫力に、肌が粟立つのを抑え切れない。
立ち位置を変えてわずかに視点をずらすと、白出のコルと涸沢岳。
穂高をもう少し見たくて、眺めたくて、天狗岩のさらに奥のピーク1,994を訪ねてみる。そこは針葉樹の巨樹がたたずむ、平坦で静かなピークだった。眺望は得られない。ここでパンを齧って引き返すことにする。
天狗岩に登り返すのもやだな。山頂北側斜面を巻いてやれ。これは振り返って撮っている。
と思ったら雪壁とも言える急斜面に引き込まれそうになった。これはまずいと、慎重に這い上がる。
稜線は近いぞ。降り注ぐ陽光に向ってなおも這い上がる。
ビンゴ、往路の僕のトレースだ。
ひゃああ、気持ちよすぎる。たっぷりの陽射し、温かな風。遠い山々の眺め、名残惜しい、雪の感触。
山靴の沈み込みが、徐々に深くなってくる。この暖かさだもの、そりゃ腐りますわ。
でも最高。いま、ここにある春。
北側に常念がでかい。
標高を下げてきて分岐を再び通過する頃には、雪はgdgd、ズブズブ。 植林帯の道はずるずる。
林道へ帰着。
湧き水のかたわらで蕗の薹を頂く。蕗味噌にしてやる。
帰路。松本平から山脈南端を振り返る。左が金松寺山、中央左寄りに天狗岩、中央に折り返し点の1,994mピーク、右が黒沢山。
山の神さま、ありがとうございました。